権限の渡され方

2023年12月05日 公開

目次

  1. 権限を渡す、裁量がある……
  2. 権限はそんなに簡単に渡されない
  3. 権限を渡してもらうステップ
    1. レベル1: 言葉だけ「権限を渡している」状態
    2. レベル2: 「アウトプットの」信頼が置かれている状態
    3. レベル3: 「アウトカムの」信頼が置かれている状態
  4. 「駅」が渡されていない……?

権限を渡す、裁量がある……

という言葉はよく聞きますよね。
実際に渡されている権限がどのような状態なのか、考えたことはあるでしょうか。
権限が渡されている状態には、いくつかのフェーズがあると思っています。
少しだけ言語化が進んだので整理も兼ねて記事にします。

権限はそんなに簡単に渡されない

最初に注意しておきたいのが、実は「権限は簡単には渡されない」ということです。
でも、言霊という言葉もあるように「権限を渡す」と言っていないと権限って渡らないものだし、自由な発想を制限したくないので、ついついマネージャーは「権限を渡してる」「隙にやって良い」言いたくなっちゃうんですよね。
「だったら権限渡すとか言うなよ」とか突っ込みたくなっちゃいますが、これはいろいろと仕方がないこともあるのでしょう、きっと。

大事なことは、「実際に自分が権限をどこまで持っている状態なのか」をしっかり把握し、適切なコミュニケーションをして信頼貯金を作り、「さらに権限を渡してもらう」という動きをし続けることです。

権限を渡してもらうステップ

「権限を渡す」「裁量を渡す」という言葉とともに一定の期待を渡されている人を対象に整理していきます。
ここでは、「電車(=現在位置)」を「どのような線路(=方法・戦略)」で「駅(=ゴール)」に進めるか?という比喩表現を使って説明します。
“「権限は渡す」「期待/ゴールはこれ」と言われている”という状態を線路で表すとどのような図になるか想像してみてください。

「権限は渡す」「期待/ゴールはこれ」と言われている、という状態を実直に表すと、このように線路がない状態を想像するんじゃないかなとおもいます。暗に「線路(=方法)をどう引くかはあなたが考えていいよ」というのが含まれているのではないでしょうか。

権限

電車、線路、駅のイメージがついたところで早速本題に入っていきます。
ステップをレベル1から3に分けて整理していますが、実際の業務では、これが輪廻します。レベル3に到達したら、次の段階のレベル1になるようなイメージです。(例: ◯◯課のレベル3<課長>の次は、◯◯部のレベル1)

レベル1: 言葉だけ「権限を渡している」状態

マネージャーから「権限を渡す」と言われて間もない頃の多くはこの状態です。
特に、面倒見が良かったり、仕事がずば抜けてできちゃったりするマネージャーだとこの状態が長く続くと思います。が、嘘をついているわけではなく、本心で言ってくれているのだと思います。
責任を渡すといっても心のどこかで心配・不安だし、今まで自分で考えていたことでもあるし考えないようにしても渡している権限のことを考えちゃう……、そんな状態でしょう。

実は、「権限は渡す」「期待/ゴールはこれ」と言われているにも関わらず、線路もしっかり引かれている状態がレベル1です。

レベル1

「ええ?」って思うかもしれませんが、実は「線路」もある程度引いてあることが多いです。
ただ、この線路の通り進んだら何の問題もなく駅までたどり着けるか?は考えられていない/あるいはしっかり自信を持てていないこともあるとおもいます。
下図のような状態が近いかもしれません。

実際のレベル1

実は、マネージャーの中ではゴールに向かう道筋、戦略がなんとなく頭にあって、「こんな感じに走るんだろうな」と思っている状態です。
特に与えられている裁量が大きければ大きいほど、任された側が未経験であれば未経験であるほどこの状態にある可能性が高いです。
だからといって、 “この線路の通り進んだら何の問題もなく駅までたどり着けるか?は考えられていない/あるいはしっかり自信を持てていない” 状態なので、「その通りに走ってほしい」とは思っていません。裁量を渡したい人が、マネージャーの言った通りに進んでしまうのは怖いですしね。

この状態の時に、最初に図示した、「線路のない状態」だと思い込み、駅にどう進むかの線路を自分なりに考えて提案する…というのは非常に危険です。
マネージャーの考えていた線路と大きく違う線路を描く可能性があり、その状態のものをレビューをもらうことはつまり、マネージャーの線路と自分の線路のどちらが正しそうか……を戦わせるということになります。
特にレベル1のときは、まだまだあなたの思考に信頼を置けていない状態(あなたの能力が足りないと言っているわけではありません。)ですので、自分の描いた線路を戦わせることは、とてつもないコミュニケーションコストが発生し、労力がかかるでしょう。

では、どうすればいいのか?
信頼関係を築いていくことが重要です。 そのためにはまずはマネージャーの思い描く線路を考えている範囲で全部共有してもらいましょう。
先ほど述べたように、マネージャーはこの線路に自信は持っていませんし、このとおり進んでほしいとも思っていません。「なんとなくこれでうまくいくんじゃない?」と思っている程度でしょう。(とはいえ、口には出さないだけである程度自信はあるかもしれません。)

あなたが最初にやるべきは、その線路が「本当に駅に辿り着けそうか」「早く、正しく進めそうか」を、情報を集め、あなたなりにしっかり確認することです。
もし情報を集めるのに苦労をしたらマネージャーにも助けてもらうと良いでしょう。線路を引いた段階で何かしらの情報を持っているかもしれません。

その上で、「マネージャーの引いた線路には障害がありそうだ」「ここの部分は自分の考えた線路を使ったほうが早いかも」という違和感を見つけ、代案の迂回路を作って一緒に提案して、ゴールに向かうためのより良い経路を作ってみましょう。これを積み重ねることで、「ああ、ある程度大枠を渡せばしっかり道筋を検証して進む線路を作ってくれるんだな」という評価がなされると思います。
(マネージャーの考えた線路がすでにもう完璧であれば……それは、そのプロジェクトにおいては移譲されることは諦めるのも手かもしれません。デリバリーで圧倒的な成果を出すことで信頼貯金を作ることを考えて次にいきましょう。)

迂回路

レベル2: 「アウトプットの」信頼が置かれている状態

おそらく、代案の迂回路を考えて提案をしてフィードバックをもらったり、実行して経験を積み重ねていくうちに、考え方も研ぎ澄まされ、マネージャーからの信頼も厚くなっていると思います。

レベル2では、マネージャーは線路を引くことをやめます。「あなたは線路を引く力があるから、どうやって線路を引くかから考えてほしい」という状態です。
「あれ?もう線路ない状態じゃん。」と思うかもしれませんが、まだまだマネージャーは駅にたどり着けるかどうかは心配です。
どうなるかというと、「線路の引き方を考えて報告してほしい」となります。線路の工事計画書ですね。
「こうやって線路を引けば、必ず駅にたどり着ける」という自分なりの線路を承認してもらいます。
マネージャーは自分で線路を引いているわけではないので、引いた線路のバトルではなく、あなたが引いた線路に穴がないか、本当に駅にたどり着けるかというところをチェックすることになります。自分が書いた線路に対してしっかり仮説や根拠を使って説明する力が必要になります。

承認

ここまで来ると、基本的に線路は自分が考えたもの主体となってきますね。完全に権限がある状態も近いです。

レベル3: 「アウトカムの」信頼が置かれている状態

「失敗してもいいよ」という言葉が頻繁に出てくるようになったり、どのような線路を引くかの根拠についていちいち突っ込まれなくなってきたあたりがこのレベルです。
ここまでくると、マネージャーは駅で、電車が来るのを待つくらいのテンションになります。 どのような方法であれ、最終的に駅についていれば良いので、定期的に電話で逆走だけしてないか、サボってないか、今どこにいるのかだけ確認すればokという状態になります。

待ってる

「どのような線路を引いてもいいけど、最後は絶対駅に来てね」
この状態になったら、おそらく更に1段階上の権限を渡されることになるでしょう。

「駅」が渡されていない……?

駅が渡されていない(=期待がない)のは、「裁量がある」のではなく、「放任」であり、ある種マネジメントをされてない状態なのかなーと考えています。
自分の真にやりたいことと、会社のやりたいことがほぼ一致している状態であれば成り立ち、マネジメントコストもかからずバリューも発揮できる、そんな状態なのかなと思います。会社のミッションの共感性が最後に求められるのはそういうことかな、と思ったりもします。
そうではないのに、この状態になっていたらすこし立ち止まって考えてもいいのかもしれません。

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